野球肘(外側型障害)

投球によって肘関節に生じる障害を野球肘と言います。野球肘は障害部位によって内側型、外側型、後方型に分けることができます。

外側型野球肘の代表的な障害は、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎があげられます。外側型野球肘の発生メカニズムは、コッキング期後半から加速期にかけ肘の外側部分(上腕骨小頭と橈骨頭の間)で圧迫ストレスが、フォロースルーで捻じれのストレスが加わることにより発症します。

また、発症の要因として骨端線閉鎖(骨の成長が終了)までは小頭後方部分から1~2本の小さな血管によって骨端核へ血液を供給しているため、十分な血液供給ができないことによる血流障害も指摘されています 1)。さらに、遺伝性素因も報告もされています 2)。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の好発年齢は12歳から17歳です 3)。超音波とレントゲンを使用した肘検診では、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の初期例は11歳、進行期は13歳、終末期は14歳にそれぞれピークがあったと報告しています 4)。この年齢の少年野球選手は特に注意が必要です。

 

早期発見、早期治療が大切

10歳から12歳の少年野球選手における上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の発生頻度は1.98%~2.1% 5,6)、中学・高校生の発生頻度は3.4% 7)との報告があります。この数字を見るとさほど多くないように思われがちですが、内側型野球肘と異なり離断性骨軟骨炎の初期段階では痛みなどの症状が現れることはまれで、症状が現れた時にはかなり進行しているケースがあります。肘がロックして関節が動かなくなってしまう症状や、損傷部分が広範囲で病巣部分が不安定化した症例では手術が必要になり、予後不良になるケースもあることを認識してください。

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎は初期の段階で発見できれば、投球中止によってほぼ正常な回復が望めます。

 

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                                     (文献8から引用)

外側型野球肘予防のポイント

➣ 大会会場や医療機関で実施されている野球検診を積極的に受け、早期発見の重要性を理解する

➣ 肘が下がった投げ方、腕が身体から離れ遅れる投げ方は肘関節外側部分に圧迫ストレスが増大します。コッキング期前半で過剰に腕を体の背面に引きすぎないこと、腕の力に頼るのではなく下半身主導での体重移動(並進運動)による腕の振りの習得が大切

➣ 肘関節周囲筋の筋力強化、可動域の確保

➣ 体幹筋の強化、肩甲骨周囲筋群の強化、股関節の柔軟性の確保

➣ 投球過多に注意し、小学生の場合1日の全力投球数は50球以内、週200球以内に制限、週間練習時間は16時間以内、年間試合数は70試合未満 9)とする

 

参考文献

1) Haraldsson S: On osteochondrosis deformans juvenilis captuli humeri including investigation of intra-osseous vasculature in distal humerus.  Acta Orthop Scand Suppl 38:1-232,1959

2) Stougaard J: Familial occurrence of osteochondritis dissecans.  J Bone Joint Surg. Br.46;542-543,1964

3) Baker CL Ⅲ et al: Osteochodritis dissecans of the capitellum.  Am J sports Med 38:1917-1928,2010)

4) 松浦哲也ほか:上腕骨小頭骨軟骨障害の病態と保存療法 OS Now Instruction No.11 167-172,2009)

5) 岩瀬毅信ら:整形外科Mook 54:26-44,1998

6)Matsuura T et al: Prevalence of osteochondritis dissecans of the capitellum in young baseball player‘s; Result based on ultrasonographic findings.   Orthop J Sports Medicine, August 2014; vol. 2, 8: 2325967114545298

7)Kida Y et al: Prevalence and Clinical Characteristics of Osteochondritis Dissecans of the Humeral Capitellum Among Adolescent Baseball Players.   Am J Sports Med 42 1963-1971,2014

8) 松浦哲也:上腕骨小頭骨軟骨障害という病態  臨床スポーツ医学 32(7):636-640,2015

9) 日本臨床スポーツ医学会整形外科学術部会編: 資料1青少年の野球障害に対する提言 野球障害予防ガイドライン   文光堂,東京,219,1998