下肢の疲労骨折

当院には、マラソンやバスケットボール、バレーボール、サッカーなどランニングやジャンプ、カッティング動作の繰り返しによりストレスが下肢のある部分に集中し疲労骨折が疑われるアスリート、スポーツ愛好家が来院します。特に新入生や冬季体力強化時期に多い傾向があります。

部位としては、脛骨、腓骨、中足骨、ごくまれに舟状骨に症状を訴えてきます。当院では患部の腫れや、w91限局した鋭い痛み・圧痛が強く、ホップテスト1)でGrade2以上陽性反応がみられる場合は必ずスポーツドクターに診察を依頼しています。

ホップテスト(片脚で10回ホッピング)

Grade0:疼痛なく10回ホッピンググが可能

Grade1:疼痛は伴うが10回ホッピング可能

Grade2:疼痛のため数回しかホッピングができない

Grade3:疼痛が強くホッピング不可能

※当院では、Grade1は練習量を落としマッサージや鍼治療で筋の緊張を緩和させ症状を観察、Grade2以上はドクターの診察を受けるようにアドバイスしています

 

疲労骨折を生じる因子2)

内的(解剖学的)因子:骨性配列、柔軟性の欠如、靭帯の弛緩性

外的(力学的)因子:オーバーユース(使い過ぎ)

 

中足骨の疲労骨折

大中らの光弾性実験結果では、中足骨で形成される横アーチが筋疲労などによって低下すると、第2・3中足骨の骨幹背側に圧縮力、底側に張力が集中し疲労骨折を発症しやすくなることを報告しています。したがって、骨性配列(アライメント)の不正、靭帯の弛緩(緩み)に対しては足底板の挿入による調整、筋疲労に対してはストレッチングやマッサージ、物理療法によるケアが大切になってきます。

 

骨密度と筋力

骨密度や筋力も疲労骨折を予防する上で非常に大切な要素です。Popp3)らは、18~35歳女性の疲労骨折歴のあるランナーと疲労骨折歴のないランナーの脛骨の骨密度や筋の横断面積を比較し、骨密度が低いことと筋サイズが小さいことは疲労骨折歴と関連することを報告しています。

若年者の女性アスリートで摂食障害や月経異常がある場合、女性ホルモンのエストロゲンが減少し骨密度が減少することが知られています。充分な骨密度を獲得するためには運動に見合ったバランスのとれた食事の摂取、正常周期での月経(エストロゲンの分泌)が大切です。

 

骨密度の測定と疲労骨折の予測

骨密度の測定方法はX線や超音波による測定方法があり、腰椎や大腿骨など過重骨を二重エネルギーX線吸収法DXA(Dual energy X-ray absorption)によって測定するのがスタンダードとなっているようですが、松田ら4)によると疲労骨折を繰り返していた跳躍系スポーツの女子高校生で腰椎・大腿骨の骨密度に低下は見られず、中手骨のみに低下がみられた症例を報告しています。このように部位によっては骨密度の低下が認められず見過ごされてしまう場合があるため、女性アスリートの骨密度測定は中手骨のような非荷重骨(MD法)で皮質骨を中心に評価しなければ疲労骨折の予測にはつながらないと述べています。

 

予 防

当院に疲労骨折の疑いで来院する学生運動部員へ発症原因について問診してみると、新入生では以前のレベルと違い練習量が増加した。上級生の場合、冬季の体力強化時期に特にランニング量やジャンプ動作が急激に増加した等、急激に過度の負荷(オーバーワーク)が加わったことによって疲労骨折を発症しているケースがほとんどです。新入生に対しては入学後2~3か月の期間は上級生とは別に基礎体力強化を主体としたトレーニングプログラムの導入が怪我の予防には必要です。冬季体力強化期間には負荷強度と休養のバランスの取れた練習スケジュール、栄養に細心の注意を払ったプログラムが必要と考えています。

 

予防のポイント

・ストレッチングの徹底(柔軟性確保)

・筋力強化

・適切な休養(十分な睡眠)

・バランスの取れた食事、運動量に見合ったカロリーの摂取

・必要に応じてインソールの装着(骨配列の調整)

・骨密度を高める(特に女性の場合)

・必要に応じてマッサージを受け筋疲労、筋緊張の緩和に努める

 

参考文献

1)Matheson GO,et al: Stress fractures in athletes. A study of 320 cases. Am J Sport Med,15:46-58,1987.

2)酒井昭典:疲労骨折発生のメカニズム 臨床スポーツ医学 Vol.27 No.4 367-373 2010

3)松田貴雄ほか:女性アスリートの疲労骨折  臨床スポーツ医学 Vol.27 No.4 383-388 201