肘の内側側副靭帯再建術(トミー・ジョン手術)は自家腱(長掌筋腱など)を損傷した靭帯部分に移植する方法で、競技復帰するまでに1年から1年半のリハビリ期間を必要とします。

Facebookから入手したST. LOUIS POST-DISPATCHに掲載された記事によると、昨年までセントルイスカージナルスの抑え投手だったSeth Manessが、昨年チームドクターのGeorge Palleta先生から損傷した靭帯を縫合修復し、その靭帯に3,5mm幅の紐状の人工靭帯internal brace(写真) を縫い合わせ補強する手術を受け、競技復帰までのリハビリ期間を術後7.5か月に設定し、メジャーリーグ開幕日復帰に向け現在リハビリに励んでいます。現在術後4.5か月ですが塁間の距離(90フィート)でキャッチボールを28球、3セット、そしてマウンドからではなく平面での投球練習を行っています。掲載された記事と一緒に載っていた投球ビデオを見ると、投球強度は全力投球を100%とすると現在50%~60%ぐらいの腕の振り(強度)ではないかと推測します。

            

internal brace                           UCL Reconstruction with internal brace 文献1から転写

 

Maness選手が受けた術式は、Andrews Sports Medicine & Orthopaedic CenterのDr. Jeffly Dugasが2013年から、Maness選手を執刀したDr. Palletaは2年前から手術件数を重ね、今のところかねがね良好な成績のようです。

Dr. Jeffly Dugasと私は、23年前にDr. James Andrewsが所長を務めるAmerican Sports Medicine Instituteで彼はdoctor’s fellowとして、私はPhysical therapy fellowとして同じ時期に在籍していた関係があり、私が2015年にアラバマ州バーミングハムにあるAndrews Sports Medicine & Orthopaedic Centerを訪問した際、Dr. Dugasからケイジ(私の名前)ちょっと私のオフィースに来て、と言われこの術式の説明を受けました。この術式によって今まで以上に加速させたリハビリができ競技復帰を早くすることができるだろうと説明を受け、internal braceをプレゼントされました(写真)。当時はまだ高校生しか実施していないとのことで、症例数は少ないが競技復帰期間は術後平均6.5か月で、術後成績は良好と言っていました。

                      Dr. Jeffly Dugas

MLB選手が肘の内側側副靭帯を損傷し、従来のトミー・ジョン手術ではなく、internal braceを使用した術式では初めての選手ということもあり、野球界最高峰のMLBプレーヤーがどれぐらいのリハビリ期間で早期に完全復帰できるか、関心が寄せられています。

Maness選手は昨年暮れにカージナルスから契約を打ち切られ、現在フリーエイジェントの身なので、できる限り早く復帰できることを他球団にアピールしたいのは理解できますが、今回の手術マネージメントパートナーのDr. Dugasも記事の中で言っていますが、慎重に術後経過を観察しているようです。再建靭帯の緩みや炎症がなく、可動域、筋力がしっかりと回復して初めて安全かつ早期復帰が可能になるのであすから、早期復帰に捕らわれすぎて再発をするのだけはManess選手には避けてもらいたいと思っています。

 

引用文献

Brian Walters, Lyle Cain, Jeffrey Dugas, et al:Ulnar Collateral Ligament Repair with Internal Brace Augmentation: A Novel UCL RepairTechnique in the Young Adolescent Athlete.  Orthop J Sports Medicine, 4(3)(suppl 3),2016