投球動作

投球動作は、下肢 体幹   肩甲帯(肩・肩甲骨) 肘 手 ボール へとスムーズな運動の連鎖によって成り立っています。投球中の腕と肩甲骨の動きには密接な関係があります。肩甲骨は身体の背面に位置し、肋骨との間で関節(肩甲胸郭関節)を作り(図1)、鎖骨(肩鎖関節)によって吊り下げられている状態になっていす(図2)。

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図1                              図 2

 

肩甲上腕リズム

ボールリリース時の腕の高さは約90°腕が上がった状態ですが、この腕の角度は肩関節だけが動いて90°の角度を作り出しているのではなく、腕の動きに連動して肩甲骨が動くことが大切です。腕が2°動くと肩甲骨は1°連動して動く、したがって腕の角度が90°上がっているということは、肩関節は60°、肩甲骨は30°動いたことになります。これを肩甲上腕リズムと言います(図3)。肩甲骨周囲筋の筋力・柔軟性の低下による肩甲骨の機能不全が起きると、肩甲上腕リズムに乱れが生じ、投球動作中肩関節や肘関節に負担が加わることになります。

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図3                     図4(右肩甲骨の位置異常)

 

症例解説

図4の症例は医師からインターナルインピンジメント、腱板炎と診断され、当院へ来院した大学生投手です。肩甲骨の位置異常(左右非対称)が見られます。肩甲骨は身体の背面に位置しているため、選手自身が異常に気付くことは非常にまれで肩痛だけに意識が偏りがちですが、実際には肩甲骨周囲筋の筋力と柔軟性の低下が原因で、上述した肩甲上腕リズムに乱れが生じ投球動作中、腕と肩甲骨の連動に破綻をきたし肩痛を発症した症例です。この選手は、問診、身体機能評価から右の股関節内旋可動域にも低下が見られ(この可動域が減少すると軸足のタメが甘く下半身主導の投球が困難になる傾向がある 右股関節:6° 左股関節:30°)肩痛発症前に、「下半身がうまく使えず、投球バランスが調子の良い時と違っていた」感覚があったそうです。この下半身の状態では、上半身優位の投法(腕の力に頼った投法)になりやすく、過剰に肩甲骨周囲筋や肩関節に負担が加わったのではないかと推測できます。今回行ったリハビリの1部を紹介します。

 

リハビリのポイント

患部のリハビリ

・肩甲骨可動性の改善及び動きの再教育訓練

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・肩関節後方筋群の柔軟性の改善

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・肩甲骨安定位(肩甲骨軽度内転位)下垂位(腕を下げた状態)での腱板筋の強化

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患部外のリハビリ

・股関節可動性の改善

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・体幹筋群の強化

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