スポーツ栄養

スポーツ選手にとってバランスのとれた栄養を補給することは、競技パフォーマンスを高める上で極めて大きな要因となります。そのためには、運動に必要な栄養所要量と供給量のバランス平衡を保つことが大切です。その指標として最も簡単で便利なものが体重測定です(朝 空腹時 脱衣状態)。体重を一定に保つということは、食物摂取量とエネルギー消費量が等しいということになります。

ハードなトレーニング時期(鍛錬期)には、食物摂取量がエネルギー消費量よりも少し多くなる状態が好ましいと言えます。それは疲労からの回復時に通常よりもエネルギーを必要とするからです。また、栄養補給は量と質のバランスを考え、単純にお腹いっぱいになるような量的補給を行うだけではなく、必要としている栄養素を充分に摂取することが大切です。

食物中にはさまざまな栄養素が含まれており、各栄養素の中で炭水化物、脂肪、タンパク質を総称して3大栄養素と言います。これらの栄養素の物質代謝を円滑におこない、諸生理機能を調節するためにビタミンやミネラルが働きます。

 

炭水化物

運動選手における糖質(炭水化物)の役割

糖質は、短時間の高強度の運動時に主要なエネルギー源として利用されます。糖質は、単糖と多糖類に分類され、単糖にはブドウ糖(グルコース)が、多糖類にはデキストリンがあげられます。

スポーツ活動時、ブドウ糖分子は主にエネルギーを産生するために分解され使用されますが、一部はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯えられます。血中のブドウ糖濃度は常に一定に保たれていますが、濃度を一定に保つために肝臓に蓄えられたグリコーゲンが使われます。脳では唯一のエネルギー源としてブドウ糖が利用されています。

糖質摂取量の目安は、低強度の運動:5~7g  中強度~高強度の運動:7~12g

糖質の貯蔵量について

生体が利用できる糖質の貯蔵量は一般人では450gぐらい、スポーツ選手では750g程度と言われています。したがって糖質代謝によって利用できるエネルギー消費量は1gは4Kcalに相当しますので約1800~3000Kcalにすぎません。そのため高強度の運動では大量のエネルギーが消費されるため運動能力を左右する鍵は、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンの量が重要となってきます。その他の運動能力を左右する要因としては、高エネルギーアデノシン3燐酸(ATP)、クレアチン燐酸(CP)、収縮タンパク質(ミオシン)、カリウム濃度があげられ、これらとグリコーゲン貯蔵量とは比例関係にあると言われています。

 

脂 肪

スポーツにおける脂質の役割

脂肪は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。飽和脂肪酸は肉やバター、ラードなどに含まれる脂質で、過剰に摂取すると中性脂肪や悪玉コレステロール増加の原因になります。一方不飽和脂肪酸は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含むサバ、マグロ、サンマ、イワシなどの魚類や、オレイン酸を多く含むオリーブ油、ゴマ油などの植物油で、血液中の中性脂肪やコレステロールを調節する働きがあると言われています。

脂肪組織に貯えられている脂肪がエネルギーに変換する過程は、脂肪分解酵素(リパーゼ)によって加水分解され遊離脂肪酸となって血液中に放出されます。血液中に放出された脂肪酸は、血流によって酸素とともに活動している筋肉に運ばれ、酸素によって分解されエネルギーを産生します。脂肪酸は、持久的な運動のエネルギー源として利用されます。

高強度の運動種目(陸上短距離、水泳100m、野球など瞬発系競技種目)では、高脂肪食を補給しすぎるとエネルギーを産生するのに不利な代謝状態(カルニチン代謝:脂肪酸主導のエネルギー代謝)になり、パフォーマンスに悪影響をおよぼします。運動選手の通常の食物中の脂肪含有量はエネルギー摂取量の30%以下に押さえるのが好ましいと言われています。

 

タンパク質

運動選手におけるタンパク質の役割

タンパク質は、筋肉・内臓・血液・皮膚など生体を構成するために必要な栄養素で20種類のアミノ酸が存在します。生体内のアミノ酸は常に分解と合成の反応を繰り返していますが、アミノ酸の中には体内で合成できないアミノ酸が9種類あり、これらのアミノ酸は食物から摂取する必要があり必須アミノ酸と呼ばれています。

運動選手は、技術練習やウエイトトレーニングなどによって筋肉の破壊が生じるため、筋肉の修復を行うためにタンパク質を十分に補給する必要があります。食物には、動物性タンパク質(肉、魚、卵)と植物性タンパク質(豆類、穀類)がありますが、運動選手の1日のタンパク質摂取の目安はさまざまな説がありますが、一般的には体重1Kg に対して1.5g~2gを動物性、植物性タンパク質からバランス良く補給するのが望ましいと考えています。70Kg の選手であれば105g~140gということになります。これだけのタンパク質量を1日3回の食事で摂取するにはかなりボリュームのある食事をしなければいけないため、食事で摂取できなかった分は間食で補ったり、筋肉の修復やタンパク質合成が盛んにおこなわれるトレーニング直後、よく言われている「ゴールデンタイム」の時期や就寝前にサプリメントでタンパク質を約30g~40g補給することが良いと思います。

たんぱく質を多く含む食品(100g平均)

鶏肉:20g  豚肉:18g  牛肉:15g  魚:20g   卵:6g 牛乳(200ml):6g  納豆:7g

豆腐(半丁):10g  ごはん(1善 150g):4g

プロテインとペプチド、アミノ酸について

プロテインとペプチドやアミノ酸は分子数の違いによるもので基本的にはすべて同じタンパク質です。プロテインはアミノ酸分子が鎖のように幾つも連結した状態になっているもの、ペプチドやアミノ酸は鎖の連結を解いた状態すなわちプロテインが分解されたものです。タンパク質は胃で消化され腸から体内へ吸収されますが、ペプチドやアミノ酸は分子の連結が2~3個に解かれた状態なので、胃での消化の必要がなく腸から体内への吸収が速くなる利点があります。しかし価格が高い点、タンパク質を多めに補給する必要がある時には一度に吸収できるタンパク質の量(約20g~30gと言われている)が決まっているため不向きになります。筋肉の修復が盛んになる運動直後や就寝前にはペプチドやアミノ酸を、筋肉トレーニング期間中でタンパク質の補給を多めに取る必要がある時期には、食事では取れない分を間食にプロテインなどでタンパク質補給をするのが良いと思います。ペプチドやアミノ酸を摂取する時には、食後の満腹時は吸収を阻害されてしまうため避け、空腹時に取るようにして下さい。

タンパク質の過剰摂取には注意

先ほども述べましたが、タンパク質は胃で消化され小腸で吸収され血液によって肝臓に運ばれます。タンパク質がアミノ酸に分解されると窒素という物質が生成されまう。この窒素は肝臓で処理され、腎臓から体外へ排泄されますが必要以上にタンパク質を摂取すると肝臓や腎臓に負担をかけることになるため注意が必要です。また体内で使われなかった過剰なタンパク質は、脂肪に変換され蓄積されることも頭に入れておきましょう。

 

ビタミン

運動選手におけるビタミンの役割

ビタミンにはエネルギー源としての作用や生体の構成成分としての作用はありません。ビタミンは体内の物質代謝を円滑にする重要な役割を果たし、酵素やホルモンの代謝調節も行っている微量栄養素と言われています。運動選手の場合、一般の方に比べエネルギーの消費量や発汗など物質代謝量が多くなるためビタミンの喪失量も多くなります。

各種ビタミンの役割

☆ビタミンA

目の大切な栄養素

皮膚・粘膜の再生に関与

ガンの予防

☆ビタミンB

ビタミンB群にはB1、B2、B3、B5、B6、B12、葉酸などがある。

ビタミンB1

ATP(エネルギーの基)産生に必要

脳の神経機能を正常に保つ

ビタミンB2

成長促進作用

脂肪のエネルギー化に必要

ビタミンB3(ナイアシン)

皮膚、粘膜の炎症を防ぐ

神経過敏、イライラ、情緒不安定を防ぐ

ビタミンB5(パントテン酸)

糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関与

抗ストレス作用

ビタミンB6

アミノ酸の合成に関与

抗アレルギー作用

ビタミン12・葉酸

貧血を予防(赤血球、ヘモグロビンの合成造血作用)

☆ビタミンC       

コラーゲン(腱の成分)の生成に関与

鉄の吸収を助ける

脳の働きに関与

抗ストレス作用

風邪やガンの予防

ホルモンの生成に関与

☆ビタミンE

ホルモン(生理活性作用)の生成に関与

抗酸化作用(からだの酸性化を防ぐ作用)

血行促進作用

自然界にはビタミンEはα・β・γ・δなど8種類がありトコフェロールと言います。

生理活性化    α<β<γ<δ

抗酸化作用    α>β>γ>δ

ビタミンE=生理活性作用(α)+抗酸化作用(γ・δ)

 

ミネラル

ミネラルは骨や歯の形成、神経の伝達、体内イオンの調節など、身体の構成成分や機能維持に欠かすことのできない微量栄養素です。

 各種ミネラルの役割
☆カルシウム

骨や歯の構成成分

筋肉の収縮運動に使われる

神経の興奮を押さえる

血液凝固作用

☆マグネシウム

神経機能の維持

筋肉の収縮運動に使われる

体温調節

※血液中のカルシウムとマグネシウムの割合は2:1が好ましい

☆カリウム・ナトリウム

細胞内外の濃度を調節(細胞内はカリウム濃度が高く、細胞外ではナトリウム濃度が高い)

※筋肉の収縮にはマグネシウムとカリウムが使用され、グリコーゲンの再補充には十分なカリウムが必要。カリウムが不足すると筋疲労が起きる。

☆鉄

脳の神経維持

貧血の予防

鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄に分けられます。ヘム鉄は動物性食品に多く含まれており吸収率は10~20%ぐらいです。一方、非ヘム鉄は植物性食品に多く含まれており吸収率は1~6%ぐらいと、ヘム鉄よりも吸収率が低くなります。鉄は他の栄養素と比べ吸収率が悪く運動選手の場合、大量の発汗、女性の場合月経などにより不足気味になりやすいのでしっかりと摂取するようにしましょう。ビタミンCは鉄の吸収を促進します。ほうれん草、長ねぎ、タピオカ、緑茶、紅茶、コーヒー、赤ワインなどは鉄の吸収を阻害するので鉄不足の選手は控えるようにして下さい。

ヘム鉄を多く含む食品(100g平均)

煮干し:18mg   干しエビ:15.1mg   豚レバー:13mg   鶏レバー:9mg

鶏卵黄:6mg    鰹節:5.5mg     しじみ:5.3mg    アユ焼魚(天然):5.5 mg

非ヘム鉄を多く含む野菜

パセリ、つる菜、小松菜、サラダ菜、ダイコン葉など。

☆食物繊維

食物成分の中で消化されない成分を食物繊維と言います。食物繊維自体は栄養素とはなりませんが、消化管の腺細胞からの消化液の分泌を促進したり、腸の内容物の輸送を活発にするなど、生理学的には意義のある物質と言われています。

 

❖ パフォーマンスアップのポイント

理にかなった技術練習の反復

柔軟性の確保

競技特性を考慮した体力強化

適切な休養

バランスの取れた栄養摂取