睡眠は脳のメンテナンスに非常に大切

睡眠は心身の機能を整え日常の生活を快適に送るために、また競技中の集中力を高めるためにも必要不可欠です。一般的に多くの方は6時間~8時間ぐらい睡眠を取っているのではないかと思います。したがって人生の約3分の1は睡眠を取っていることになります。睡眠は身体を休めるだけではなく、実は脳のメンテナンスに非常に大切なことが分かっています。

睡眠には、ノンレム睡眠レム睡眠の2つの段階があります。ヒトは眠りにつくとノンレム睡眠に入り、浅い眠り(ステージⅠ・Ⅱ)から始まり、30分~60分経過すると深い眠り(ステージⅢ・Ⅳ)に入ります1)。この深い眠りに入ると脳(大脳皮質)の活動は低下し、成長ホルモンの分泌が盛んになり組織の修復がおこなわれ疲労回復が促進されます。近年、深いノンレム睡眠が記憶の強化に重要な役割を果たしていることも分かっています2)。

ノンレム睡眠の後10分から20分程度のレム睡眠に移行し1)、間脳(視床、視床下部)の活動が高まり、覚醒時(起きている状態)かそれ以上に脳は活発に働きだし、日中に記憶した情報を整理する作業が行なわれます。以後ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に出現し、約90分の周期で一晩に4~5回睡眠サイクル(睡眠単位)を繰り返し目覚めます。

成人の場合、サイクルの後半はステージⅢ以上の深い眠りはあまり見られなくなり、レム睡眠の持続時間が長くなってきます。睡眠の約75%はノンレム睡眠から成り、残りの約25%がレム睡眠で成り立っています。子供の場合、ステージⅣのノンレム睡眠が長く、睡眠の後半でもノンレム睡眠を認められることが多いことが分かっています。

睡眠中の脳波を取ると、ノンレム睡眠はゆったりとした大きな振幅の波形が、レム睡眠は速くて振幅が小さい波形が記録されます。レム睡眠中は脳機能のメンテナンスのために脳が活動しているようです。睡眠は身体の恒常性や精神の正常な機能の維持、記憶と学習の強化に関与していると言われています2)

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『覚醒』と『睡眠』の仕組み

脳には覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠の3つの作動モードがあり、覚醒時には大脳皮質が活発に働いています。この大脳皮質に働きかけ『覚醒』と『睡眠』に関係しているのが中脳・橋・延髄からなる脳幹部分で、覚醒を作り出すのは中脳と橋です。この中脳と橋に命令を出しているのが大脳の最も深いところに位置している間脳の視床下部で、視床下部の前側には睡眠中枢(視索前野)が、後側には覚醒中枢(視床下部外側野)が存在します。覚醒とは、覚醒中枢からオレキシンが脳幹に作用し、脳幹から覚醒物質(ヒスタミン、ドーパミンなど)を大脳皮質に向け分泌することで覚醒モードを作ります。一方睡眠は、睡眠中枢からGABA(ɤ―アミノ酪酸)という物質を脳幹に作用させ、脳幹での覚醒物質の分泌を抑え、大脳皮質への信号を抑制することで睡眠モードを作ります3。このように覚醒と睡眠はシーソーの様な力関係によってコントロールされています。

 

参考・引用書籍

1)睡眠と脳の科学  古賀良彦著 祥伝社新書

2)睡眠の科学  櫻井武著 講談社

3)睡眠障害のなぞを解く  櫻井武著 講談社