FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)手術からの復活
女子プロゴルファーの亀田愛里選手、2014年に右股関節痛のリハビリを続けながらプロテストに合格。しかし今後年間を通してレギュラーツアーで戦える身体になるために2015年1月5日に右股関節の手術(関節唇縫合術、頚部関節軟骨形成術、関節包縫縮術、棚寛骨臼形成術)を受けました【当院のホームページに掲載しているトレーニング&コンディショニング情報の投稿目的である“トレーナーを目指している人、若いトレーナーの方へ役立つ情報を提供したい”という趣旨を理解していただいた亀田選手の了承を得て記事を書いています】
退院後はアスレティックリハビリテーションをKスポーツマッサージ鍼灸院に併設したK Conditioning & Athletic Developmentで実施し、術後7ヶ月でLPGAの下部ツアー・ステップアップ後半戦に出場、昨年は前半戦までステップアップに出場し、LPGAツアー・トーナメント出場資格を得るためにクオリファイリングトーナメント(QT)に挑戦しましたが、ファーストQT、セカンドQTまで通過しましたがサードQTを通過することができず、残念ながら今年度はレギュラーツアー、ステップアップの出場資格を得ることができませんでした。
今年はスポンサーからの推薦やマンデー予選会を通過し、数試合のレギュラーツアー、ステップアップに出場し試合勘が鈍らないように努め、その一方でスイングの更なる精度アップに取り組み、そして1月の奄美大島、8月の御殿場での体力強化合宿を含め年間を通して体力強化に励み10月から始まるクオリファイリングトーナメントに備えました。
彼女はセカンドQTからの出場となり無事通過、そしてサードQTも通過し、ファイナルQTに進み、102名の出場選手の中でQTランキング33位の成績を収め、2018年度のLPGAツアー・トーナメントへの出場の道が開けました。
アスレティックリハビリテーション
リハビリは術後3週から、彼女の希望もあり当院で実施することになりました。執刀医の指示でリハビリ開始時の荷重は2/3から開始し、全荷重の許可が出たのは術後5週でしたが過剰に患肢に荷重することは避けるように言われていました。この時期に注意したことは修復した関節唇へのストレスが加わる股関節屈曲・外転・内旋運動に注意し、可動域訓練は愛護的に実施しました。
棚形成した部分の移植骨の骨癒合が確認された4月25日(術後15週)からジョギング、ショートアイアンを使用してのアプローチ練習開始。それから3週間後に7番アイアンでのフルスイングを開始し、さらに1週間後(術後19週)にドライバーでのフルスイングを開始しました。
5月31日(術後5ヶ月)の診察で、執刀医から試合出場許可が出ましたが、私とツアーコーチと話し合い、まだもう少し下半身、コアの安定性を高めることが必要と判断し、7月9日からステップアップの試合に参戦しました。
リハビリ中は患部周辺の硬さやツッパリ感、痛みが出ることもありました。その時には何が起きているのか説明し、やるべきことやってはいけないことを理解してもらい、焦る気持ちをコントロールすることにも気を配りました。リハビリ期間中は、試合に出たくても出ることができないジレンマや辛さ、不安な気持ちが周期的に彼女を襲ったと思います。私も時には厳しく接し、その時には涙ぐむことも何度もありました。しかし、ひたむきにリハビリに取り組んでくれました。
特に、今年は試合出場機会が少なかったですが、腐らず諦めずトレーニング・技術練習に必死に取り組んでいた彼女の姿勢には頭が下がります。この日々の地道な努力が来年度のレギュラーツアー出場への道に繋がったと思います。『努力は決して裏切らない』です。亀田選手本当におめでとう。
彼女の姿をみて私も多くのことを学びました。我々トレーナーは選手やスポーツ現場で多くのことを学ぶ機会を得ることができます。
そして彼女の姿は、現在私のところでプロ選手を目指しトレーニングに励んでいる今年1打オーバーでプロテストに合格できず悔しい思いをした選手や、高校3年生で今年日本女子オープンに出場し来年プロテストを受験する選手、2年後にプロテストを受験する選手の大きな励みになってくれました。
亀田プロ、これで本当の意味でのプロゴルファーのスタートラインに立てたね!来シーズンは年間を通してコンスタントな成績が納められるように、今オフのトレーニングは更なる体力アップを目指し頑張るぞ!
亀田愛里選手の応援、よろしくお願いします。