肩関節の構造と投球動作
肩甲上腕関節(肩関節)
肩関節(肩甲上腕関節)は、骨の形態から上腕骨頭の大きさに比べ、肩甲骨関節窩が小さいボールアンドソケットの形態をしてているため、他の関節に比べ大きな動き(可動域)を獲得している反面、安定性は常に乏しい関節です。
投球動作では肩関節の安定性は非常に大切な要素です、この肩関節の不安定な構造を補うために、以下に紹介する関節包、関節靭帯、関節唇、腱板筋など軟部組織が果たす役割は非常に大切です。
静的安定化機構(関節包、関節靭帯、関節唇)
関節包は、片方側(近位)は関節唇の周囲に、もう片方側(遠位)は上腕骨に付着しています。関節包で覆われた肩関節内は陰圧になっており関節の安定性を高めています。上・中・下関節上腕靭帯は、関節包の関節面(内側面)に肥厚した形で付いていて、それぞれ以下のような役割を担っています。
➣上関節上腕靭帯は、上腕の下方への安定性に働く
➣中関節上腕靭帯は、90度以下の上肢外転・外旋位で上腕骨頭の前方安定性に貢献する
➣関節上腕靭帯は、90度以上の外転・外旋位で上腕骨頭の前方安定性に貢献する(この靭帯が投球動作中の上腕骨頭の安定性に果たす役割は非常に大きい)
関節唇は、肩甲骨関節窩の周囲(辺縁)に付着している線維軟骨性の組織で、浅い関節窩の凹構造に深さを作り、上腕骨頭と関節窩の適合を高め、吸着力を増すことによって安定性を高めています。
腱板筋
インナーマッスルと言われる腱板筋群は上腕骨頭を上方と前側・後側から包み込むように4つの筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)で構成されています。投球動作中の肩関節安定性(求心位)を保つためには非常に大切な筋肉です。投げ過ぎによる腱板筋の疲労、肩に負担の加わる投球フォームは腱板を痛めやすく肩痛の原因になります。普段から投球数の管理、肩関節の柔軟性、バランスの取れた筋力、肩甲骨周囲筋(前鋸筋・菱形筋・僧帽筋)のコンディショニングを行い、肩・肘関節に負担の加わらない投球フォームを身に着けることが投球障害を予防するために大切なポイントです。
野球肩の治療