野球の指導者、若いトレーナーの方々に一読していただければ幸いです。

先月に来院した某大学野球部の選手の話です。

彼は小学5年生から野球を始め、小・中学校で肘を痛めた既往歴があります。大学野球、ポジションが捕手のため、ノックでの送球だけではなく、ブルペンに入り何人もの投手(1年生~4年生投手は約30人)の投球を受け、投手に返球する球数は多い日には300球以上投げることがあるそうです。
投球過多の日が続き、腕が重たく感じるようになり、肘の痛み、そして突然ロッキングを昨年、今年と起こしています。

ドクターからは頻繁にロッキングを起こすようであれば手術をした方が良いと勧められてはいました。ただ本人ができるならば手術を回避したいということで、昨年は肘周囲筋の筋緊張を緩和させることでロッキングは解除され、肘周囲筋の柔軟性の確保と軽い負荷での筋力強化、無駄な投球は避けるようにしてもらい、この1年間は肘痛は再発していなかったようです。

しかし、少年時代に患ったOCD(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)という肘の軟骨損傷による遊離体(通称関節ねずみ)が原因で昨年も今年も大事な秋のリーグ戦前に肘関節内で遺残軟骨が引っかかってしまい肘が動かない、肘痛を伴い肘の曲げ伸ばしの動きがかなり減少してしまう症状でリタイアしました。

特に少年野球を指導されている指導者の方に理解してもらいたいことは、成長段階にある子供のケガは筋肉や靭帯、腱よりも骨や軟骨の損傷が多く、このような部分に大きなストレスが加わったり、たとえ程度の軽いストレスでも累積されるような環境下では、高校・大学で本格的に野球をやる時期になって今回のようにリタイアを余儀なくされてしまう選手が多いことを知っていただきたいと思います。

この様な成長段階にある子供たちを投球障害から守るためには、
1)年齢に応じた投球制限
2)変化球投球開始年齢
3)肩・肘関節に負担の少ない投球フォームの習得
4)常に全力投球は避け、状況に応じて投球スピードに強弱をつける
5)柔軟性の確保
6)成長に応じた練習内容、体力強化
7)食材からのバランスの取れた栄養補給
を提案します。

今回のような肘の外側障害OCDは、内側に痛みを訴える野球肘と違い初期の段階では痛みを伴わないことがほとんどです。したがって、痛みが出るまで医療機関を受診しないケースも多いようです。現在多くの県で実施されている野球大会会場やスポーツ関連の病院で行われている肘検診を積極的に受けることも早期発見に繋がります。

またOCDと診断された場合、たとえ痛みがあまりなくても投球は中止することが絶対です。初期の段階で発見され投球を中止すれば約90%、せっかく初期の段階で発見できても投球を継続していれば約12%ぐらいしか回復はしない医学的データがあります。

結局今回は彼としっかり話し合い、スポーツドクターの診察を受け、ドクターの提示する治療方針に従うことを納得してくれました。そしてねずみを取ってもらう(遊離体摘出術)手術を受けました。

成長段階の時期に負ったケガが原因で優秀な選手が高校・大学生になり十分なパフォーマンスを発揮することができない症例があることを知ってください。
また、選手は痛みやケガをして最初から医療機関を受診するケースばかりではありません。我々のような鍼灸マッサージ治療院や接骨院へ来院するケースも沢山あります。その時にはしっかりとした評価をして、ケガの程度が自分たちの守備範囲内なのか、それとも精査を直ぐすべき症例ではないのか見極めをしっかりすることが大切だと思います。