投球障害に対する提言
投球障害に対する提言
Dr. Andrews の提言1
多くのMLB(メジャーリーグ)プレーヤーや藤川球児(元カブス)、田澤純一(レッドソックス)、ダルビッシュ有(レンジャーズ)ら日本人MLBプレーヤーの執刀をされたアメリカのスポーツ医学界の権威Dr. James Andrewsは、投球障害について興味深い話をされています。投球障害によって医師の診察を受ける選手の多くは、競技レベルが高い選手が多く、ユース時代から始まった微細損傷の累積に起因する(同一部位への度重なる過剰なストレスやケガ)と考えられるケースが多い傾向にある1)。 体の発育に応じた、投球数、休養期間の大切さを訴えています。
メジャーリーグと全米ベースボール医学安全顧問委員会が協力して、ユース期の選手達をオーバーユースによる投球障害から守るために、以下のガイドラインを提供しています。
各年齢による投球数制限と必要な休養期間 2)
Dr. Andrews の提言2
投球は、常に全力投球するのではなく球速差やボールに変化つける、コントロールを良くする、安定した投球メカニズムで投げる、ことが大切と述べています。そして、投手の目的は、スピードガンの数値を上げることではなく、塁にランナーを出さないこと、得点を与えないことであると述べています3)。
決してスピードガンの数値を上げることが悪いのではなく、大谷翔平選手(日本ハムファイターズ)のように160Km/hを超える球速で打者から三振の山を築くのは見ていて魅力的です。しかし、誰しもが160Km/hのストレートを投げることができるわけではないことは皆さんもお分かりだと思います。彼にはもって生まれた資質と、投球に必要な筋力強化、そしてプロ野球投手の中でも肩関節周辺の筋肉の柔軟性が突出して高いこと、そのためのコンディショニングを日々実施し継続していることです。投球に必要な筋力強化と柔軟性の確保を日々行っている彼の隠れた努力は見習うべきポイントです。
全米ベースボール医学&安全顧問委員会の提言(1996年)
- 降板後のブルベンでの投球練習禁止
- 投球過多の回避(降板後、野手として出場を避ける)
- 1チームに複数人の投手を用意する
- 休養、回復をさせるために年間9ヶ月以上投手をすることを避ける
☞ 投球障害を予防するためのポイント
- 肩関節・肘関節に負担の少ない投球フォームの習得
- 対戦打者、ゲーム状況に応じたピッチングの組み立ての重要性
- 投球練習は常に全力投球するのではなく、70~80%のスピードでストライクゾーンの4コーナー(インコース高・低 アウトコーズ高・低)に投げ分けるコントロールを重視した投球練習を取り入れる
- 体の成長に応じた適切な投球数と休養の重要性
野球肩・野球肘の治療
参考文献
1) James Andrews, Gleen Fleisig: Prevanting Throwing Injureis Journal of Sports Physical Therapy 27(3): 187-188, 1998
2) Guidelines for Youth and Adolescent Pitchers,2014. PITCH SMART.ORG
3) James Andrews, Gleen Fleisig USA TODAY SPORTS for THE WIN May 29, 2014